麻生外相の問題発言

私は憲法9条2項の改正に賛成です。自衛隊は「軍隊」でも構わないと思うし、集団的自衛権を行使できる状態にしておくべきだと思っています。何故なら、一部の不穏国家やテロリストが跋扈する世界、が現実として存在するからです。


一方、日本が9条改正へ動くことで、戦争に向かうのではないか、という不安を覚える人々が内外に多数存在することも現実です*1。改正を主張するあらゆる政治家には、不安を取り除く努力を行う責務があると思っています*2


ゆえに、先の大戦での日本の行動を正当化しようとする歴史認識が存在することは残念です。より正確に言うと、そのような思想を持つことは自由ですが、政権中枢に近いと思われる人や組織*3が「戦争正当化認識」を公言することは明らかに国益に反していると感じられます*4


例えば、先日の麻生外相の「遊就館」に関する発言は極めてモンダイだと考えます。
「遊就館」戦争美化でない 事実を展示と麻生氏(共同→産経)

麻生太郎外相は21日午後、米通信社ブルームバーグのCS放送で、靖国神社にある戦時中の兵器などの展示施設「遊就館」について「戦争を美化する感じではなく、当時をありのままに伝えているだけ。当時はそうだったと事実を述べているにすぎない」との認識を示した。

麻生氏の個人的な認識では「遊就館は事実を述べているだけ」かも知れませんが、http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051025#p1に書いた通り、遊就館には主観的な歴史解釈が記されています。少なくとも私にはそう感じられましたし、一部の人に嫌われても仕方が無い内容であることは確かです*5


麻生氏の発言が良くないもう一つの理由は、首相や政府の見解と結果的に食い違っていること。先日19日の記者会見で、小泉首相は「戦争を正当化する見解は支持しない」と明言しています*6


中国からのちょっとした抗議程度で済むなら良いのですが、このような発言が今後も繰り返されると、外交関係を決定的に損なう可能性があります。国内の9条改正反対派(決して少数派ではない)の更なる反感を買うことで、自民党が党是とする憲法改正が遠のくおそれもあるでしょう。歴史認識に関する不用意な発言は避けるにこしたことはありません。


【関連エントリ】靖国問題の根本解決法(靖国大好き人間には納得できないが)


【補足】私などよりも激しい遊就館批判へのリンクを。先日とりあげたブログ「なにものかのひとりごと」のエントリ。
靖国神社と遊就館は、ただちに解体すべきです
私自身は、解体すべきとまでは思いませんが(靖国神社にも信教の自由があるから)、負け戦を賛美するかのような遊就館歴史観は嫌いですし、国益的に損としか思えません。


【後刻追記】「なにものかのひとりごと」のフクダユウイチ氏が、エントリの主旨への批判に値しないと思われるコメントを消し始めたようです。個人ブログでは管理人は神であるべきだと思っているので、私はその姿勢を支持します。「言論弾圧が始まりました!!」などと見当違いのことを書いている名無しネット右翼のコメントは見苦しいです。

*1:http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051014#p2に書いた通り、憲法改正への最大の障害は国民投票になる可能性が高いと予測しています

*2:小泉首相は、新憲法草案から復古調を一掃するなどの努力をしているので、私は評価しています

*3:例えば「新しい歴史教科書をつくる会」や靖国神社も、実態はさておき政権中枢に近いと思われても仕方がないでしょう

*4:首相の靖国参拝よりも印象が悪いのではないかと

*5:実際、中国から早速反論が来ました。中国、靖国神社問題の敏感性を認識するよう日本に要求中国国際放送局

*6:http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051120#p1