閣僚や議員の靖国参拝は憲法20条に基づいてのみ擁護されるべきである

昨日の参院予算委員会での安倍首相の答弁から引用します。

国のために尊い命を落とした英霊に対して尊崇の念を表するのは当たり前だ。閣僚はどんな脅かしにも屈しない。その自由は確保していく。

日本国憲法第20条によると、信教の自由は何人に対しても保証されています。その意味で、議員や閣僚(首相も含む)の参拝の自由は当然確保されねばなりません。政治的判断で首相周辺が参拝を回避するという行き方はあっても良いと思いますが、何らかの外圧が原因で参拝したい個人が参拝できないことは決してあってはなりません。


その一方で、「英霊に対して尊崇の念を表するのは当たり前」に違和感を覚えます。かつての小泉元首相や最近の菅官房長官の言葉を借りるならば、英霊を尊崇するか否かも「心の問題」であり、決して「当たり前」ではないと思います。

また、私自身は先の大戦における英霊に尊崇の念を抱いていますが、慰霊の手段が靖国神社である必要は感じません。もし上記答弁における「当たり前」に「閣僚は靖国を参拝するのが当たり前」という意図が少しでも含まれるとすれば、憲法第20条の「いかなる宗教団体も、国から特権を受け(てはならない)」に照らしてグレーであると感じられます。

当然のことですが、靖国神社は一宗教団体に過ぎません。いわゆるA級戦犯の合祀が一部の人々に問題視されていますが、靖国神社そのものにも信教の自由があるわけですから合祀それ自体は全く問題無いでしょう*1。しかし、国もしくは閣僚が靖国神社を特別扱いするならば、これは憲法20条に違反する可能性が高くなります。個人の思いで参拝するのは自由ですが、靖国を政治的に利用する意図があるとすれば、これも20条に照らしてグレーです。


現在の安倍政権の高支持率は、主に経済政策への期待に支えられていると考えられます。その一方で、主に改憲靖国等に関連して「愛国」を強調するような発言や動きが時々垣間見えるのは気になるところです。前から何度も書いていることですが、国を愛する心は人それぞれ。下手に愛国心や精神論を強調すると足元を掬われかねません。

*1:ただし合祀に到る経緯で当時の厚生省が靖国神社に事務的な協力をしたことは憲法違反であったと考えますが、これはひとまず別問題とします