中曽根氏には現実が見えていないのか?

http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051029に書いた通り、自民党の新憲法草案は完成直前に小泉首相自ら大幅に手を入れ、前文素案にあった「アジアの東、太平洋と日本海の波洗う美しい島々」「国を愛する国民の努力によって国の独立を守る」「和を尊び、多様な思想や生活信条をおおらかに認め合いつつ、独自の伝統と文化をつくり伝え」などの保守臭が強い表現が片っ端から削られました。憲法改正に必要な多数の賛同者を得るためには必要なことだったと思われます。


さて、素案を作った中曽根元首相は激怒しているようです。
憲法シンポ:中曽根元首相、試案を大幅改定され怒り心頭(毎日新聞)

 新憲法起草委員会で前文小委員長を務めた中曽根氏は、基調講演。自ら作成した前文の素案から「太平洋と日本海の波洗う美しい島々」「和を尊び」などの表現が削除されたことを「一番大事なところを外しちゃった」と批判。改定後の前文を「官僚臭がぷんぷんしている」と酷評し、しまいには民主党がまとめた「憲法提言」をほめ上げた。

 一方、その後パネル討論で、起草委の事務局次長として前文をまとめた舛添氏も負けじと反論。「小委員会から上がってきたものをまとめるというプロセスを経ている。(小委員会は)中曽根氏らそうそうたる面々だが、任務はそこで終わり」と一蹴(いっしゅう)。中曽根案について「『和を尊び』というが、(衆院選で)刺客を送った小泉(純一郎)首相は憲法違反か」とやり返した。

中曽根氏は首相時代「風見鶏」などと揶揄されていましたが、別の見方をすれば、時流を読んで現実的に対応する為政者の資質を備えていたということでしょう。支持率が高い長命政権でしたし、私自身、リアルタイムで知っている歴代首相の中で中曽根氏を最も高く評価しています。


しかし、今回の発言は頂けません。中曽根氏には、首相の削除意図が見えていないのでしょうか? 試案のままでは、おそらく自民党主導による憲法改正は不可能だったことでしょう。既に現役の政治家ではない中曽根氏からは、往年の現実的判断力が失われてしまったのかも知れません。