大峰山強行登山報道に思う

1週間前のニュースに関連する時期遅れの記事ですが…


女人禁制の大峰山で女性ら3人が登山強行(朝日新聞)

 女人禁制が1300年間続く修験道の聖地、奈良県天川村大峰山への登山を目指すと公表していた性同一性障害を持つ人ら35人のグループが3日、現地を訪れた。女性の立ち入りを禁じる結界門(けっかいもん)の手前で地元住民約100人と議論した結果、改めて話し合いの場を設けることで合意して解散したが、その後にメンバーの女性ら3人が登山を強行した。


 住民側が結界門前で待ち構える中、午前9時50分ごろにグループが到着。地元・洞川(どろがわ)地区の桝谷源逸(げんいち)区長(59)は「先人から受け継いだ伝統や生活がある。地元の心情を理解してほしい」と登山中止を求めた。グループ側は今後も話し合いを続けてほしいと要望した。しかし、午後0時半ごろ、3人が結界門をくぐって山に入った。その1人は「問題提起をしたかった」と説明した。

個人的に、第1印象では大して興味が持てなかったのですが、一部の政治系ブログではかなり大きな話題になっています。


保守派ブログのほとんどは強行登山したグループに対して「地域の歴史や伝統を破壊するな」という論調での批判。典型的なものに一つリンク。
http://d.hatena.ne.jp/fury/20051106/1131280640


一方、一部のいわゆるサヨクブログは「男女同権の立場から女人禁制は不当」と主張して炎上しています。一昨日とりあげた「スコヴルテイチョウ」の
http://d.hatena.ne.jp/yuichi_f/20051105
が典型。


以下、私の所感を書いておきます。


修験道が女性の修行を認めるべきか否かは、宗教団体自身の意思で決めるべきこと、としか言いようがありません*1


登山強行の是非や、登山道を女人禁制にすることの是非に話を絞るなら、大峰山山上ヶ岳が私有地であるか公道であるかが最大の問題だと思います。


私有地であり、かつ土地の持ち主が“女人禁制”を望んでいるなら、その意思を無視して登山するのは言語道断。


一方、地元の人々が公道で「女性は通るな」と主張しているのなら、従う必要無し*2。登山強行そのものは批判されるべきでないと思います。


果たして真相はどちらなのでしょうか? 


いくつかのブログのコメント欄で「参道の一部は私道」であるという指摘を見掛けました。一方、登山したグループを支援する立命館大学講師の伊田広行氏のpage
http://www.tcn.zaq.ne.jp/akckd603/page5.html
には、

大峰山」の「女人禁制」の結界門から山頂への登山道は、公道です。「女人禁制」区域には公道が含まれているのです。

と書かれています*3。いずれも明快なソースに欠けます。検索してみましたが、決定的な情報を見つけることができませんでした。


朝日新聞をはじめとする多くの大メディアが、私有地か否かという点に突っ込んで書いていないのが不満。この問題を語る上では最重要の視点だと思うのですが…… それとも、何らかの理由で誰かが所有を曖昧にしているのでしょうか?

*1:個人的には、女人禁制の宗教が存在するのは構わないと思います。

*2:「地域の歴史や伝統」など、それを信奉する人以外には通用しない論理。たとえ歴史ある信仰であろうと、法治国家である現代日本で宗教活動を行うなら、公の場所への立ち入りを自分たちの都合で拒否するのは好ましくないと考えます

*3:本記事の主旨からは外れますが、http://www.tcn.zaq.ne.jp/akckd603/page5.htmlに書かれている「質問書」には、強烈な押し付けがましさを感じます。ですから、強行登山したグループの理念そのものには賛同できません