国立追悼施設議連設立総会

特定宗教に依らない国立戦没者追悼施設についての所感は、http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051030にかなり詳しく書きました。要約すると、追悼施設の理念は支持するが、建立するなら世論の支持が得られるよう慎重に、という感じ。


今日は補足です。まずは、施設建立を目指す議連の初総会の記事から。
国立追悼施設議連、設立総会に50人…民主幹部も参加(読売新聞)

無宗教の新たな国立戦没者追悼施設の建設を目指す自民、公明、民主3党の有志議員による「国立追悼施設を考える会」(会長=山崎拓自民党前副総裁)の設立総会が9日、国会内で開かれ、国会議員約50人が出席した。


 焦点の追悼施設に関する調査費の2006年度政府予算への計上については、会として政府に要求するかどうかの結論を次回以降に持ち越した。


 総会には、自民党福田康夫・元官房長官加藤紘一・元幹事長、公明党の神崎代表、冬柴幹事長民主党鳩山幹事長江田五月参院議員会長らが出席した。


 新たな追悼施設に関しては、公明党が06年度予算での調査費計上を求めており、副会長の鳩山氏も「できるだけ早く調査費をつけたい」と記者団に語った。


 ただ、山崎氏は記者会見で、「会として調査費計上を求めるかどうかは白紙だ」と強調した。


 一方、総会に続き開かれた勉強会で福田氏は、官房長官当時の私的懇談会が無宗教の追悼施設建設が必要とする報告書をまとめながら、検討に着手しなかった理由について「イラク自衛隊を派遣しようかという時期で、(自衛隊の犠牲者を想定しているのではないかと)自衛隊との関係を言われないかとの慎重論があった。また、靖国問題が燃えさかった時期で、沈静化を待つべきだとも考えた」と説明した。


 一方、「英霊にこたえる実行委員会」(会長=堀江正夫・元参院議員)は同日、「中国・韓国に迎合する売国的発想だ」などと追悼施設構想を批判した。


 小泉首相は9日夜、新たな追悼施設について「靖国神社に代わる施設ではないですからね」と語った。

追悼施設問題も、結局は宗教論争なのでしょう。靖国信仰をもつ人は、「靖国には寂れて欲しくない」*1靖国には特別な場であって欲しい」*2と言う考えから追悼施設に懸念を表明します。一方、靖国に思い入れのない人や、一部の他宗教を信仰する人は「あらゆる信仰を持つ人が抵抗なく戦没者を追悼するには、特定の宗教に依らない施設が必要」と主張します。論理的に唯一の正解が存在しない難問。


ところで、「英霊にこたえる実行委員会」の「新追悼施設=中韓迎合」理論って、一部の保守系ブログに見られる理屈と全く同じ。リアリストである私は、この理論による追悼施設批判には全く説得力を感じません*3。そもそも、追悼施設建立の動機は中韓の反感だけではないですし、百歩譲って中韓の要求で施設を造ったとしても、それが良いものなら認めるのが筋だと思うからです*4。「靖国には寂れて欲しくない」という類の主張の方が余程マシだと思います。

*1:日本人には神社信仰を持つ人が少なくないので、寂れないと思いますが

*2:これは一歩間違えば、政治による特定宗教の保護を禁ずる憲法20条の理念に反するのですが

*3:同じ理由で「現憲法は占領軍の押し付けだから改正すべし」という意見にも全く説得力を感じません。私自身は憲法改正賛成派ですが、それは別の理由

*4:とは言え、http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051030に書いた通り、コストに見合うほどの国益が得られるかどうかは今後徹底的に検討・議論すべきだと思います