竹島問題への私見
今日は、島根県の条例に定められた「竹島の日」。多数の保守派ブログ(ネット右翼を含む)が竹島問題をとりあげているでしょう。「社会派DS」も少々触れてみます。
竹島問題の基礎知識については割愛します。大雑把な概論はid:dslender:20051211に書きましたが、より詳しい知識と分析は、All Aboutに掲載された辻雅之氏の文章2つが参考になります。
さて、仮に私が日本の独裁者だったら竹島問題をどうするか。ズバリ、奪還して単独実効支配することはキッパリ諦めます。韓国の支配が既成事実化している現状での完全奪還は非現実的だからです。ただし、建前上はあくまでも竹島領有権を主権し、韓国への厳重抗議を続けます。何故なら、国際法上日本に分がある領土問題で下手に譲歩姿勢を見せると、他の外交問題で日本が舐められる可能性があるからです*1。そして、状況が許せば、共同管理や漁業権の確保などの妥協案を探ります。
日本の大メディアは竹島問題をどのように捉えているのでしょうか。今日の全国4大紙社説の中では、読売と産経がとりあげているので、少々引用して比べてみます*2。
[竹島の日]「主権の問題を県まかせにするな」
条例制定は竹島問題について国民世論の啓発を図るのが目的だ。知事も参加して竹島を考える集会などが開かれる。
だが、日本の主権にかかわる領土問題で国民に理解を求めることは県まかせでなく、本来、政府が行うべきものだ。
これは全く同感。ロシアが実効支配する北方領土に関して「北方領土は日本固有の領土です」的なキャンペーンを繰り広げることを是とするなら、似たような状況の竹島問題では政府の宣伝不足を感じます。何故でしょう? 日韓関係が日ロ関係よりデリケートだから? それとも竹島が北方領土より遥かに小さいから? いずれも、宣伝を躊躇う理由としては弱いと思います*3。
日本政府は、そのつど抗議してきたが、韓国は「妄言」などと拒絶している。日本側が抗議以上に踏み込まないのは、韓国を刺激するのは得策ではない、との判断もあるからだろう。だからといって、国民に竹島の領有権への理解を求めることまでおろそかにしてはならない。
竹島周辺は、ズワイガニなどの好漁場だ。日韓両政府は98年11月、竹島周辺を暫定水域とし、事実上の「共同管理」とする漁業協定に署名した。
ところが、7年余りたった今でも具体的な操業条件は確定せず、事実上、日本漁船は締め出されている。日韓両政府は昨年5月から協議に入っているが、進展はない。ルール作りを急ぐべきだ。
領土問題の解決は極めて難しい。だからこそ、領土問題について国民の幅広い理解を求め、日本の立場を強化していく努力が大事だ。
「領土問題の解決は極めて難しい。」の部分は、現実的保守派である読売の面目躍如。日本が抗議以上に踏み込まないことを批判してはいません。この辺は嫌韓ネット右翼的には気に入らないかも知れませんが*4、現実的姿勢として評価できると思います。領土奪還のような困難に突撃玉砕するよりは、まずは漁業権などの実質的国益の確保を図る方がずっと賢いと思います。
一方、産経新聞の主張は若干異なります。
【主張】竹島の日 固有の領土を銘記したい(page後半)
韓国の静観ペースに日本が合わせていたのでは、竹島が日本に返ってくる日はますます遠のく。
韓国国会の視察に対し、日本はソウルの大使館を通じ、書記官が韓国側に電話で抗議しただけだが、もっと強い抗議の意思を示すべきだった。
既に述べた通り、韓国の政治体制が変わりでもしない限り、「竹島が日本に返ってくる」望みは極めて薄いです。この辺りに、読売の認識との違いを感じます。とは言え「もっと強い抗議の意思を示すべきだった」には同意。舐められない外交は大事です。
戦後、独立した韓国の李承晩政権は竹島を韓国領とする「李ライン」を一方的に設定した。これに対し、日本は何度も抗議し、国際司法裁判所に提訴することを提案したが、韓国はこれを拒否し、不法占拠を続けている。韓国が国際社会で重要な位置を占めるためにも、日本の提案に応じ、公正な第三者の判断を仰ぐべきである。
国際法に従えばその通りですが、現実には、韓国が国際司法裁判所への提訴に同意することはまず考えられません。産経の主張は概して非現実的。リアリストの私としては同意できないところです。