核武装はあり得ない

北朝鮮の核実験発表を機に、2chや一部のネット右翼ブログで「日本の核武装賛成論」を度々目にするようになっていますが、昨日の朝のテレビ番組では、自民党の強硬派として有名な中川昭一政調会長核兵器保有容認とも取れる発言を行ったようです。
[北朝鮮核実験]「日本の核保有も選択肢」中川政調会長(毎日新聞)

 自民党中川昭一政調会長は15日、テレビ朝日の討論番組に出演し、北朝鮮の核実験問題をめぐる日本の核保有論について「(日本に)核があることで、攻められないようにするために、その選択肢として核(兵器の保有)ということも議論としてある。議論は大いにしないと(いけない)」と述べた。その上で「もちろん(政府の)非核三原則はあるが、憲法でも核保有は禁止していない」と強調した。

 与党三役クラスの有力政治家が、公の場で核保有の議論を提起した例はこれまでなかった。

 中川発言に関連して、安倍晋三首相は同日、遊説先の大阪府茨木市での街頭演説で「北朝鮮核武装宣言しようとも、非核三原則は国是として守っていく」と述べた。

議論するだけなら構わないと思いますが、私も日本の核武装には勿論反対です。

毎日の記事の後半は中川昭一発言を批判する与野党関係者の発言で埋まっています。とりあえず久間防衛庁長官の箇所だけ引用すれば十分でしょう。

 中川発言について、久間章生防衛庁長官は15日、毎日新聞の取材に「今そういう議論はない。そういう必要もない。米国の核の傘の中で、日米安保条約に基づいてやっているのが一番いいし、それで十分だ」とはっきり否定した。

核兵器は残忍だから持ってはいけない」とか「唯一の被爆国なのだから持つな」のような感情論はひとまず抜きにしましょう*1。対北朝鮮戦略的に考えても、日本が核武装するのはむしろ危険。下手に相手を刺激することになり、向こうがヤケクソで撃ってくるかも知れません(まあ、これは可能性に過ぎませんが)。

また、北朝鮮以外の国々との関係に大いなる悪影響を及ぼします。これは可能性論ではなく、日本が核武装したら確実にそうなります。

日本の核武装はデメリット多すぎです。

核武装を唱える連中に力を与えないためにも、今後とも日米関係は最重要視して大事にしなければなりません。

*1:こと核兵器に関しては、この種の感情論も大事な意見だと思いますが

安倍晋三と周恩来

10月7日の毎日新聞岩見隆夫「近聞遠見」が印象に残りました。安倍首相が対中外交を無難にこなしたことを評価すると同時に、中国との慎重な付き合いを促す記事。

近聞遠見:35年前、周恩来の「日本観」=岩見隆夫

かつての周恩来首相と米国のキッシンジャー氏との会談について書いた部分を引用します。二人とも親日的人物として知られていますが、本音の対日感情は必ずしも無条件の好意ではなかったようです。

 中国の日本認識を知る一つの手がかりは、34年前、日中国交正常化のころの周恩来首相(以下、周)の発言にある。周は前年、中国を2度極秘訪問したキッシンジャー米大統領特別補佐官と通算14回も会談を重ねた。71年10月22日、人民大会堂での会談で、周が、

「では、日本について議論を始めましょう」

と促す場面がある。(「周恩来 キッシンジャー機密会談録」04年、岩波書店刊)

 周は日本経済の発展がいかに海外に矛盾を与えるかを延々と述べたあと、キ補佐官の見解を求めた。以下、2人のやりとり−−。

 キ「ホワイトハウスの見解だが、中国と日本を対比すると、中国には伝統に由来する普遍的な視点がある。しかし、日本の視点は偏狭だ」

 周「彼らはより偏狭で、それも奇妙です。島国の集団だ」

 キ「日本人の社会はとても特異で、それゆえ、日本人は唐突に爆発的な変化を遂げることができる。彼らは封建制度から天皇崇拝へ2、3年で移行した。天皇崇拝から民主主義へ3カ月で移行した」

 周「いまや彼らは再び、天皇崇拝へ逆戻りしようとしている。天皇に会われたことがあるか」

 キ「ええ、(天皇の訪欧途上の)アラスカで」

 周「とても複雑な人物ですね」

 キ「とても複雑な人物で、真に心からの会話ではなかった」

 日本の特異性について、さらに2人のやりとりが続き、共通認識を確認し合った。日本の核武装でも、

 キ「非常に迅速に作る能力を持っている」

 周「あり得ることだ」

と息を合わせた。

「日本はアメリカの制御がなければ暴れ馬だ。いたるところでです」

とも周は述べている。

 周は日中国交正常化を成功に導いた功労者で、日本に理解の深い大政治家、と日本では好感と高い評価を得てきた。そのことに間違いはない。

 だが、一方では、機密会談録で明らかなように、日本を相当懐疑的にみていることも確かだった。時を経て胡錦濤時代になっても、似たものだろう。

 偏見だ、と言いたい気持ちもあるが、そう見られて仕方ない面もある。相手の胸のうちを腹に据え、立ち向かってもらいたい。老婆心ながら。

周恩来といえば、日中のみならず米中関係の改善にも大いに寄与した偉大な政治家だと思っています。彼が本音では日本を懐疑的に見ていたことが事実ならば、私の周恩来に対する評価はますます高まりますよ。

一般に、政治や外交は、本音や感情だけでは巧くいかないことが多いものです。時には私心を抑えて事に当たる器量が必要。警戒心を露にせずに日中国交回復を成し遂げた周恩来氏は、明らかにそのような能力に長けていたことになります。

翻って、現在の日本の首相の安倍氏に関し、首相就任以前と以後の発言が食い違っている*1ことへの批判の声があるようです。「変節」と揶揄する人も居るようです。しかし、この程度の食い違いは批判する理由にならないと思います。「私的な主張」と「首相としての立場」が異なるのは全く不思議なことではないからです。

そういえば、かつて森喜朗氏が「安倍さんは小泉さん以上に靖国関係を上手く処理するだろう」と発言したことを思い出しました*2安倍氏を良く知らなかった当時の私にはピンと来ない発言でしたが、今思えば、森氏の人物評は相当的確だったのかも知れません。

ともかく、安倍首相に対する最終的な評価を下せるのはもう少し先の話でしょう。彼に批判的な人々がいう通り、単なる軟弱者なのかも知れません。しかし、国会答弁において、従来の自論と異なる内容であっても表情を変えずに堂々と発言する姿を見るに、ひょっとしたら、強かさでは周恩来に匹敵するかも知れないとも感じられるのです。

*1:首相の靖国参拝の是非などについて

*2:id:dslender:20060113#p2

自民党−創価学会会談報道への驚き

安倍首相と小泉前首相が、創価学会のTOPと会談したことがマスメディアで大きくとりあげられています。少し驚きました。
安倍首相:創価学会の池田氏と会談 総裁選後に極秘で(毎日新聞)
安倍氏、小泉氏が創価学会の池田氏と9月に相次ぎ面会(日経新聞)
日経の方から引用します。

 安倍晋三首相が就任直前の9月22日に公明党の支持母体である創価学会池田大作名誉会長と会談していたことが7日、分かった。自民党総裁就任のあいさつを名目に首相側が申し入れた。首相の祖父、岸信介元首相と学会の戸田城聖元会長が親しかったことなどが話題になり、日中関係などでも意見交換した。

 9月28日には小泉純一郎前首相も退任あいさつのため、池田氏と面会。2人が会ったのは初めてで、小泉氏は在任期間中に国政選などで公明党創価学会から受けた支援に謝意を表明した。

報じられた事実そのものは、大した話ではありません。

自公連立政権以前から(それこそ記事中に言及されている岸信介氏の時代から)自民党創価学会との人脈があったことは事実ですし、自民党総裁が連立を組む政党の支持団体のトップの所に挨拶に行くこと自体は不思議ではありませんし、何らモンダイありません*1

ただ、マスメディアが明確に報じたことに驚きました。過去に無かったことではないでしょうか*2。しかも、毎日記事によると「極秘」であったはずの会談が、2週間以上経過してから報じられるのは不思議。

ちなみに、小泉前首相については、10月1日放送の「バンキシャ!」で信濃町に車で乗り付けた映像が流れました。明らかに創価学会本部への挨拶目的だと判る情景でしたが、番組内では言及なし。私はこれを見て、今回もメディア報道は無いと思っていたのですが……

今回、何故ここまで大きく報道されたのでしょうか? 

これ以降の記述には私の推量が混じることをご了承ください。

この報道で得をするのは誰でしょう? 安倍氏といえば、首相就任前からタカ派イメージが付いていた人。タカ派イメージは公明党を支持する創価学会員に敬遠されやすい要素なので、自公連立政権維持へのアキレス腱になる可能性大。ところが、安倍首相と池田名誉会長が良好な関係にあることが保証されれば、安倍氏への心証が一気に好転することは確実です。負のイメージを打ち消すのに十分過ぎるほどのインパクトがあるはず。

このような効果を狙った「誰か」が、メディアにうまく根回しをしたというのは、私の考えすぎでしょうか。仮にそうだとしたら、そしてその「誰か」が首相周辺だとすれば、安倍氏はなかなかの策士だと思います。

安倍首相の就任以来の動きを眺めてみると、公明党中韓などのデリケートな扱いを要する勢力とは、今のところそれなりにうまくやっているように見えます。実は、私は小泉首相時代は安倍氏に対して余り関心が無かったのですが*3、今後は少し楽しみ。勿論、首相としての評価を下せるのはまだまだ先の話。所信に掲げた「美しい国、日本」をどのように実現していくのか、今後も注目してまいります。

*1:宗教団体が特定政党を支援したり、首相が宗教団体TOPと会ったりするだけなら憲法20条の「政教分離原則」に抵触しません。宗教団体そのものが政治権力を行使したり特権を受けたりするのはマズイですが。

*2:この種の会談が従来報じられなかった理由を推測すると、特定の宗教団体の話題をとりあげることへのメディア側の躊躇や、「政教一致だ」とイチャモンを付けられるリスクを回避したい人達の存在、といったところでしょうか

*3:実際、当ダイアリーでは、これまで安倍氏批判も賞賛も殆ど書いてません。麻生太郎氏の「失言」は何度も叩きましたが。

2ch天皇コピペ

2chプロレス板で見かけた天皇関連のコピペが面白かったのでメモしておきます。

もし世界が128人の天皇だったら

14人は実在しません。
5人は天皇かどうだか疑われています。
8人は女です。
18人は少年です。
23人は幼児です。
1人は幼女です。
3人は幼児のうちに位を奪われました。
5人は気が違っています。
13人はやりたい放題やりました。
29人は何もできませんでした。
9人は貧乏に苦しみました。
15人は戦争をおっぱじめました。
6人は戦争に勝ちました。
8人は戦争に負けて退位しました。
2人は戦争に負けても居座りました。
17人は天寿をまっとうしました。
30人は病死しました。
6人は殺されました。
6人は流罪人として死にました。
1人は自分の仕掛けたいたずらにひっかかって死にました。
1人はまだ生きてます。
13人の天皇が、3人の皇太子と、16人の皇子を殺しています。
2人の天皇は、逆に皇子に殺されています。

もしもあなたのお父さんが死んだとき、お葬式をあげることができるのなら……
あなたは3人の天皇よりは裕福で、5人の天皇よりは親孝行です。

もしあなたが戦いの危険や位を奪われる恐怖や流罪の苦悩、あるいは飢えの悲痛や
即位の礼ができない恥辱を一度も経験したことがないのなら……
あなたは58人の天皇より恵まれています。

もしもあなたの生みの親がどちらも健在で、ともに暮らしており、あなたが兄弟や親戚と
殺し合いや財産の奪い合いをしたことがないとしたら……
あなたはたった9人の天皇と同じくらい幸せです。

更新再開宣言か?

半年ほど社会派DSを全く更新していませんでした。死亡などではなく、多忙が理由。メインブログだけは毎日更新を死守しています。


とは言え、そろそろ更新を再開しようかと思っています。基本的な記事コンセプトは従来通り。ただし、毎日更新は無理っぽいので、週一程度で更新します。

盧武鉉大統領が遊就館から得るものって…

「遊就館を訪問したい」韓国大統領、靖国参拝けん制(読売新聞)

盧大統領は「日本にとってアジアとの友好協力はあらがえない時代の流れだ」と指摘するとともに、歴史共同研究や共同歴史教材作りの必要性を強調。さらに、「遊就館に行ってみたいと思ったが、周りの者に止められた。日本側が承知してくれれば行ってみたい」と述べた。中曽根元首相はこの発言について、「靖国問題を正面から出さず、(間接的表現で)関心を示した」との見方を示した。

遊就館靖国歴史認識の象徴ですから,靖国に批判的な人なら一度行ってみたいと思うのは自然です.私も昨年の10月に行きました.そのときの感想はid:dslender:20051025#p1に少し書いてある通り.主に満州事変や支那事変(日中戦争)に関する記述が日本に好意的過ぎると感じました.一方,正直なところ韓国についての記述は殆ど印象に残っていません.それもそのはず,遊就館戦争博物館ですから,武力侵略で統治したわけではない韓国の扱いが相対的に軽くなるのも当然.


だから,盧大統領が遊就館に行ったとしても,得るものはさほど多くないのではないかと他人事ながら少し心配になったりしますが,それでも是非見に来て欲しい気がします.じっくりと展示品を見て,出来れば展示文章も熟読して頂いた上で,忌憚ない感想を述べて欲しいものです.


歴史認識については,絶対的な唯一の正解などあり得ません*1.様々な考え方が存在する状態が正常.その意味で,日韓が歴史認識について徹底的にやり合うことは大いに意義があると思います.たとえ妥結点が見いだせなくても,です.


幸い,日本政府も反対しない模様.
官房長官、韓国大統領の遊就館訪問「いつでもお迎えする」 (日本経済新聞)

安倍晋三官房長官は17日午前の閣議後記者会見で、16日に中曽根康弘元首相らと会談した韓国の盧武鉉大統領が靖国神社の戦争資料館「遊就館」の訪問に意欲を示したことについて、「これはまさに盧武鉉大統領のご判断だろうと思う」と述べ、日本政府としては反対しない考えを示した。

*1:南京事件での死者数など,客観的数値には唯一の正解が理論的に存在しますが,そこから得られる認識については,万人が納得できる結論など存在し得ないでしょう