日の丸ウィニングラン不放映問題

トリノ五輪の女子フィギュアスケートの表彰式後、荒川静香選手が日の丸を背負ってウィニングランを行いました。そのシーンをNHKの生中継が全く映さなかったことに憤慨している人をネットで見かけます。主にネット右翼*1に属する人。

例えば、

  1. 偏向NHK日の丸ウイニング-ラン放映せず(Let's Blow! 毒吐き@てっく)
  2. 偏向NHKに受信料を払う価値なし(Dr.マッコイの非論理的な世界)
  3. 生中継で全く放映されなかった荒川選手ウィニングラン〜NHKはメディアとしては失格だ!(木走日記*2


UPされた動画を観てみると、日の丸を持たないウィニングランは全部映しましたが、荒川選手が日の丸を受け取った後を全く映さず、主にリプレイ動画に終始しています。このようなNHKの編集方針に対し、上記のブログの人たちは、「NHKは左偏向」とか「NHKは無能」とか騒いでいるわけです。NHKに抗議のメールや電話を入れている人も居ます。


NHKが日の丸ウィニングランを全く放映しなかったのは何故でしょうか? 私が初めて映像を観たときは「NHKは当初からウィニングランをある程度流した後はリプレイ等に切り替える予定で、その切り替えタイミングがたまたま荒川選手が日の丸を受け取るのと合致してしまった」と推測しました。しかし、実際に抗議電話を掛けた「三輪のレッドアラート」(反小泉ネット右翼ブログ)のエントリ
(電突結果)NHKがウィニングランを放送しなかった理由
によると、NHKの職員はそんな説明をしておらず、曖昧な弁明に終始しています*3。三輪氏は「映像を共有していた韓国への配慮で日の丸をできるだけ映像から排除した」と推理しています。明確な根拠はありませんが、そういうことがあってもおかしくないとは思います。ネット右翼連中から見ると、そのような配慮も「偏向していて許しがたい」となるのでしょうねえ。


さて、件の映像に対する私の主観的な所感を書きます。日の丸ウィニングランのカット理由が何であるかに拘らず、NHKの編集方針は適切であったと感じました。NHKの最低限の役割は、正規のプログラムを視聴者に忠実に伝えることだと思います。表彰式の正規プログラムである「君が代」をバックにした国旗掲揚も、表彰式終了直後の日の丸無しウィニングランもきちんと映していたのですから、それで十分。一般に、TVメディアの役割として、会場の状況を生で伝えるのみならず適宜リプレイを挿入することも大事だと思います。私の美意識によれば、あの時間帯はリプレイが適切。しかも、深夜のため演技を生で観ずに眠ってしまった人*4にとっては、リプレイ画像に時間を割いてもらう方が有難いとも言えます。


勿論、「日の丸ウィニングランを流すのがNHKの役割」という考え方の人が居ても構わないですし、受信料を払っている限りは、NHKの番組内容に抗議する権利もあります*5。ただ、この考え方も私の考え方も主観的なものに過ぎません。多くの政治的主張と同様、万人が納得する“絶対に正しい結論”などあり得ないでしょう。ゆえに、「日の丸ウィニングランを流さないのはメディア失格」的な物言いはかなり極端だと感じます。


抗議をどのように取り扱うかは、NHK自身が自主的に判断すれば良いことです。

*1:私が採用する「ネット右翼」の定義については、id:dslender:20051013#p2

*2:「木走日記」はメディア論が中心なので、私の定義による「ネット右翼ブログ」には該当しませんが…

*3:たまたま事情に詳しい職員が席を外していたので曖昧な説明になった可能性はあるかも

*4:私自身も該当します

*5:この件で「もうNHKには受信料を払わない」と吼えているネトウヨも多数います。私はこの言い方にも違和感を覚えるのですが、今日は割愛。気が向いたら近日書きます。