私は女系天皇容認です(前編)

先日予告した通り、皇室典範改正論議──要するに女系天皇を認めて良いか否かの論議──に関する私見を数回に分けて書きます。


プロフィールにも書いた通り、理想としては、時の天皇の意思を反映して皇位継承が行われるべきだと思っていますが、所詮は理想。法律に縛られるのが現実である以上、継承のあり方も政治が決めるという形をとらねばなりません。


そこで、まずは私の理想を一切排除して、天皇の直系長子の優先的継承(つまり女系天皇を容認)を謳った「皇室典範に関する有識者会議 報告書」に対する姿勢を明確にしておきます。


結論として、有識者会議の報告書を概ね支持します。すなわち、女系天皇を容認します。*1


以下、女系天皇に反対する保守系ダイアリー「Dr.マッコイの非論理的な世界」の1月30日のエントリ
[天皇] 引き続き、女系反対メール作戦をお願いします
に書かれている「女系天皇に反対するポイント」(とてもわかりやすくポイントがまとめられていると思います)を引用させて頂き、それにコメントする形で、私が女系天皇を容認する理由を端的に記していきます。

「125代ずっと男系であり、女系に移行すると別王朝となって皇統が断絶する」
男系の歴史と伝統を尊重すべきと思うか否かが、女系反対か容認かの決定的な分岐点です。この価値観のギャップは相当に深く、異なる見解の人が議論しても、統一的結論には至らない可能性大でしょう*2。私の場合、「女系ならば別王朝」「女系に移行すると家系断絶」という感覚が皆無なのです*3
「そうなると将来的にサヨク皇位の正当性を突かれ、天皇制廃止につながりかねない」
杞憂でしょう。「左」な人々*4の中でも皇室廃絶論者は少数なのが現実*5。廃絶論者の中でも「女系は正統でない」論を利用しようと考える者は更に限定されます。心配無用。
「たった1年の議論で結論を出すのは拙速にすぎる」
焦る必要はないという点では同意。ただ、最初のポイントのところで述べた通り、時間を掛けて議論しても、余程のことがない限り*6、趨勢が変わる可能性は小さいと思います。
「国民は女系と女性の区別もついておらず、国民への説明も不足している」
この点は同意します*7
「皇族のご意向がまるで反映されていない」
反映するのが望ましいことには同意。ただ、皇族(とりわけ天皇陛下周辺の方々)が意見を表明すると、何かと問題になることも現実。
「皇族方はおそらく女系容認に反対である」
前項とは違う観点からひとこと。皇族の方々はみな女系反対なのでしょうか? 根拠薄弱だと思います。逆に、陛下周辺が女系を容認しているのではないかと思われる節もありますが、これも決定的根拠はありません。*8
「この問題については先の選挙の自民党マニフェストに一切無かった」
皇室典範問題は、色々な意味で選挙公約に相応しくないと思います。自民党が公約に含めようものなら、「天皇の政治利用」と非難されかねません。

長くなるので、今日はここまで。次回(明日とは限らない)は、「私が女系を容認する理由(後編)」と題して、伝統としての男系の問題や、天皇に対する国民感情の問題等から、女系容認の理由をもう少し詳しく書くことにします。

*1:ごく些細な懸念はあるのですが、今日のエントリの論旨に関わらないほどに些細なので、懸念については後日書きます

*2:有識者会議の吉川弘之座長による「歴史を考えると終わりなき議論になる」という発言や、逆に女系移行反対派の稲田朋美衆院議員による「価値観が相当に異なるので対案は出さない」という発言は、いずれも賛成派と反対派のギャップの深さを意図してのことだと思われます

*3:伝統としての男系の問題については、次回もう少し詳しく論じます

*4:私自身を含めてもいいです。男系維持を主張する人からは明らかに「左」に見えるでしょうから。

*5:たとえば社民党でも、党の政策としては象徴天皇制維持を支持しています。

*6:「余程のこと」というのは、たとえば天皇陛下が記者会見を開いて自分の意見を述べられるとか……あり得ないでしょうね……

*7:ここ数日は複数の議員が発言しているので、結構詳しく報じられるようになってきましたが

*8:この件は、次々回辺りにもう少し突っ込んで論じてみたいと思います