社民党の自衛隊違憲化に思う

1994年、自社さ連立政権の村山富市首相の時代に、社民党(当時は社会党)は自衛隊を合憲と認めましたが、この度、再び違憲とする立場に戻ることになりました。

社民党、「自衛隊は違憲」党宣言で方針転換へ(読売新聞)
部分的に引用します(太字は引用者による)。

 宣言案では、違憲状態にあるとした自衛隊を「縮小を図り、国境警備、災害救助、国際協力などの任務別組織に改編・解消して非武装の日本を目指す」とした。

 社民党が、違憲としていた自衛隊を合憲と認めたのは、自民党新党さきがけと連立政権を組んだ社会党時代の94年7月。同党出身の村山首相が「自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は、憲法の認めるものである」と国会で答弁した。

 今回再び、自衛隊違憲とする理由について、社民党は「自衛隊イラクやインド洋に派遣されるなど、94年当時と比較して大きく変質し、必要最小限度の実力組織の枠を踏み越えている」と説明している。

 同党の方針転換の背景には、自民党民主党との違いを鮮明にし、党勢の退潮傾向に歯止めをかける狙いもあるようだ。ただ、基本政策の頻繁な変更を疑問視する声も上がりそうだ。

今回の立場変更は、厳密な意味では「基本政策の変更」とは言えないと思います。何故なら、自衛隊を合憲と解釈するか否かに拘らず、自衛隊の縮小→改編→非武装化は、社民党の主張として一貫し続けているからです。たとえば、2005年3月に社民党が発表した憲法をめぐる議論についての論点整理には次のようにあります。

「平和基本法」を定め自衛隊を災害救援のための武装の国際協力隊等に縮小・再編することや、「人間の安全保障」の理念の徹底、日米安保を平和友好条約に転換すること、平和主義・第9条を世界に拡げるため「非核不戦国家宣言」を国会で決議し国連総会で承認してもらうこと、など様々な提起を行なっている。

昨年の「縮小」が今回「解消」に変わっていますが、行きつく先はどちらも非武装。まさに「がんこに非武装*1。しかし、非武装化日米安保事実上廃棄を共に行うのは、テロリストや不穏国家*2が跋扈する現状では危険だと思われます。平和が守れるかどうか怪しいので、到底容認できません。


また、今回自衛隊違憲とした理由に、1994年当時と比べての自衛隊の「変質」を挙げていますが、私には「変質」したとは思えません。自衛隊イラクやインド洋に戦争をしに行ったわけではありません。だから、決して「必要最小限度の実力組織の枠」を越えてはいないと思います。


とは言え、「自衛隊海外派遣はとにかくダメ」という発想をする人々*3にとっては社民党違憲解釈もそれなりに説得力を持ちます。


社民党の頻繁な憲法解釈変更は、党の台所事情に依るところが大だと思われます。そもそも、1994年の合憲化は、与党としての政権運営の必要に迫られての判断。少数野党となった現在は、違憲化する方が非武装思想に共感する支持者への受けが良いと判断したのでしょう。実際、今回の変更で従来の支持者が離れることはないはずです*4

*1:2003年総選挙での社民党キャッチコピー「がんこに平和」をもじっています

*2:日本にとっての不穏国家といえば、第一に北朝鮮でしょう

*3:多数派ではないものの、それなりに居ます

*4:ここからは直感的な推測なので注扱いにしますが、民主支持者の中で左派的な層が若干社民になびく可能性があると思います。だとすれば、今後、ますます民主党は苦しくなるか?