私は女系天皇容認です(後編)

id:dslender:20060204#p1の続きです。前編では、皇室典範改正は(やや不本意ながらも)政治に任せざるを得ないことを最初に論じ、次いで女系天皇反対ブログが挙げた簡潔なポイントを引用して所感を述べる形で女系容認の理由の一端を記しました*1。この後編では、私自身の言葉で、女系天皇容認がbetterだと思う理由の核心部分をできるだけ簡潔に書きます。


有識者会議報告書(HTML版)では、女系天皇女性天皇を認めるか否かのポイントとして「(皇位継承の)安定性」「国民の理解と支持」「伝統」の3つを挙げています。このうち、女系反対派と容認派で最も意見が大きく分かれるのは「伝統」です。


「伝統」を論じる際の最大のポイントは、

  • 「過去の伝統としての男系皇統維持」を最重要視するか?
  • 「家族としての天皇家における世襲」を最重要視するか?

ということに尽きます。


前編に書いた通り、私自身は、「女系⇒皇統断絶」という感覚を一切持ち合わせていません。皇子だろうが皇女であろうが、直系実子である以上は天皇の血が受け継がれ、更にその子にもちゃんと受け継がれるという感覚。一方、女系に強硬に反対する人は、一旦女系になってしまったら別王朝になってしまうような感覚を抱くようです。


このような意見の違いは、どちらかというと理屈ではなく感情の問題であり、個人の歴史観や家族観などに依存して決まります。どちらかが絶対に正しくてどちらかが間違っているなんてことはあり得ないと思います*2。実際、私は女系反対論が「間違っている」とは思っていません。納得はしないが、なるほどそういう考え方もアリかな、という感じ。ゆえに、(非現実的仮定ですが)仮に天皇陛下や皇太子殿下が「どうしても男系を維持したい」と主張されたとしたら、その意向を尊重するでしょう。


しかし(繰り返しになりますが)典範改正は政治の仕事なのが現実。だから皇族の意向をひとまず措いて考えたとき、過去の時代の伝統に固執して傍系から後継者を選ぶよりも、男女を問わず天皇家で育った方が世襲する方が遥かに自然だと感じるのです*3


なお、私が女系を容認するのは、男女平等の観点からではありません。「現行皇室典範は男女差別」という考え方が存在することは承知していますが、全面的には賛同しません。一般社会に適用されたら差別かも知れませんが、典範の守備範囲が皇室という特殊な家系内部に留まる限り、男女差別にはあたらないと思っています。


さて、「国民の理解と支持」の件にも触れておきましょう。私のような考え方は過半数の国民に支持されると予測します。国民全員が女系天皇女性天皇の差異を理解した状態での世論調査結果がないのが残念ですが、差異を十分に理解している(と思われる)自民党国会議員の中で約3分の1が女系反対です。非反対派の中には敢えて態度を保留した人も若干居るかも知れませんが、それでも反対派が過半数になるとは思えません。世論の趨勢も似たようなものだと思います*4


以上、私自身の「女系天皇容認理由」をまとめたエントリを終わります。なお、私以外の人が書いた女系容認論としては、至極当然ながらオリジナルの有識者会議報告書のPDF版を推します。長大ですが、豊富な参考資料は圧巻。先日初めて通読し、女系容認の妥当性を確信した次第。


皇室典範改正に関しては、他にも補足的に書きたいことはあるのですが、後日に回します。

*1:反対派へのコメントから始めた理由の一つは、既に「有識者会議報告書」という力作女系容認テキストが公表されているので私自身の意見は後回しでも良いと思ったこと。もう一つの理由は、報告書の内容への反論が保守派ブログ界で目立っている現状では、まずは反論へのカウンターから始めることにも意義があると思ったこと

*2:女系反対派の中には「男系の伝統維持が理論的にも絶対に正しい」のような主張をする人も居るようですが、到底首肯できません。

*3:ただ、天皇家姉弟が生まれた場合、法的に姉を第1継承者に定めることに異論はないものの、実際の継承はお子様方の意思や個性などに応じて弾力的におこなって欲しい気がします。有識者会議報告書への私の唯一の懸念はこの点です

*4:世論調査のみで判断すべき問題でないことは勿論ですが、一つの判断材料にする分には差し支えないでしょう