皇室典範改正問題は理屈ではない

以前から書いている通り、皇室典範問題についての私自身の考え方は、
天皇家が継承者を決めるのが理想だが、現行法では典範に従うのがルール。政治で決めるとすれば、女系容認で直系長子優先の方が合理的」
というもの*1。尤も、私がこのような考え方を迷いなく採れるのは、男系なるものを全く重視しない家族観の持ち主だからかも知れません。


たとえば、男系維持派の人が「女性天皇が鈴木さんと結婚したら、その子供の代からは天皇家ではなく鈴木家になる」と主張するのを時々見かけます。私には理解不能な感覚です。男女問わず、天皇の血を引き継いでいれば天皇家。私の感覚ではこれが当然。


一方、仮に私が「男子に家を継がせたい」的な家族観の持ち主だったら、やはり「極力男系を維持すべし」と考える可能性は高いでしょう。その意味で、男系維持派の主張自体が間違っているとは全く考えていませんし、私の意見が絶対的に正しいとも思っていません。


要するに、皇室典範問題は宗教問題とそっくり。「キリスト教の神とイスラム教の神はいずれが正しいか」という問いに、万人が納得できる論理的な答えを出すのは無理なのです。


しかし、ブログ界の男系維持派の主張の中には、「女系容認派は絶対的に間違っている」とか「女系容認派は思慮が浅い」とか「女系容認派は皇室を理解していない」的な論調を割と頻繁に見かけます。*2。このような論調には到底納得できません。「女系容認派の論理には欠陥がある」的な主張も詭弁です。既に述べた通り、論理的な正解などそもそもあり得ないからです。


一方、一昨日話題になった旧皇族出身の竹田恒泰氏の主張は、ネット右翼系ブログの男系維持論とは一線を画していました。

女系天皇「駄目なものは駄目」(ライブドアニュース)

竹田さんは「女系が悪いと言っているのでなく、2000年もの間、大切に男系を続けてきた天皇家にはふさわしくない」と主張。「男系を守らなければいけないという合理的な理由はないかもしれない。しかし、男系に継承されてきた世界最古の家だから、という理由で十分」と自身の考えを語った。

なぜかはわからないが、古代から男性の子孫こそが血の継承者だと考えられてきたことが重要。理屈ではなく伝統、文化だ」と説明した。

「理屈ではない」「男系を守らなければいけないという合理的な理由はないかもしれない」というのは、まさにその通り。竹田氏の主張には説得力を感じました。賛同はしませんが。

*1:こう考える詳しい理由はid:dslender:20060204とid:dslender:20060205に書きました

*2:最近では、ネット右翼id:drmccoy:20060220:p1氏などは典型でしょう。