前原氏代表質問関連の各社社説

昨日の日記では、一昨日の民主党・前原氏の代表質問について、主に批判的な立場から書きました。


関連して、結果的に1日遅れの話題になりますが、前原氏の質問に関する各新聞の主張から、部分的に拾っていきます。


昨日も書いた通り、最も民主マンセー色、野党激励色が強いのは毎日新聞だと感じられます。
社説:代表質問 改革の「陰」をテコに攻勢を(1月24日・毎日新聞)

 ライブドア事件、耐震データ偽造事件、米国産牛肉の輸入再停止は改革のほころびともいえるからだ。それだけに3点セットは野党への追い風となった。

3点セットは共産、社民両党ともスクラムを組みやすい課題なので、国会運営で野党側が発言力を奪い返せる芽が出てきたともいえる。

昨日書いたことの繰り返しになりますが、2004年に行われたとされるライブドアの違法行為と小泉政権の改革とは関係ないですし、牛肉の輸入再停止は米国側の責任に過ぎないと思うので、「改革のほころび」には無理ありすぎ。

 前原氏は代表就任後「対案路線」を掲げていたが、今回の代表質問から軌道修正してきた。自民党との区別化を図ろうと何でも対案から、重要課題に限った対案へとシフトしている。代表質問で、はっきり対案を示したのは、子どもの安全を守る「学校安全対策基本法案」などわずかだった。民主党吹き出した追い風を逃さないため「追及型」に軸足を移しつつあるようだ。小泉首相は「批判するばかりでなく、提案、対案もしてほしい。党内抵抗勢力に負けるな」とエールを送ったが、かつての迫力はなかった。

対案をほとんど出さずに批判に終始したことについても、このように評価してみせています。前原氏が対案路線を放棄した背景には、対案を出しても自民党に「いいとこ取り」されるだけで労多く益少ないという身内からの批判もあるのでしょう*1


次に朝日新聞。こちらも民主激励色はあるものの、「3点セット」よりも「格差問題」を強調しているのが特色。
代表質問 改革の痛みはどうした(1月24日・朝日新聞)

 前原氏は、生活保護を受ける世帯やフリーター、ニートの増加、正社員とパートの賃金格差の拡大などを挙げ、「小泉改革には光と影がある」と指摘した。

 首相は真っ向から反論した。

 「所得再分配の効果や、高齢者世帯の増加、世帯人員の減少といった社会構造の変化の影響を考慮すると、統計データからは所得格差の拡大は確認されない」

 首相は、ニートの増加などは「将来の格差拡大につながる恐れがある」とは認めたが、いま格差が広がりつつあることはどうしても認めたくないらしい。

 強気の答弁を支えるのは、施政方針演説の前日にあわせるように内閣府が公表した所得格差の拡大を否定する見解である。だが、その主張には与党内でも少なからぬ異論が出ている。

これについては、朝日の主張に一分の理があると思います。「格差」を実感する人が存在することは確かなのですから、それにどのように対処していくのか、今後の争点にしていくのが良いと思います。


さて、産経の主張は代表質問には一切触れず、ライブドア堀江容疑者の批判のみ。
【主張】ライブドア事件 堀江流を終わらせよう 「時代の寵児」メッキ剥げた(1月24日・産経新聞)
最初はちょっと意外な気がしましたが、フジサンケイグループライブドアの因縁を思い出し、納得しました。


最後に、読売を。他の3紙と異なり、前原代表にかなり批判的。しかも、昨日の私が気づかなかった視点から批判しています。毎日新聞とは主張が真逆で、対案路線を採らないことに批判的。対案を出せば身内から批判され、出さなければ出さないで批判される前原氏も大変。
[国会代表質問]「民主党対案路線はどこへ行った」(1月24日・読売新聞)
特に、次の箇所にはハッとさせられました。

 前原氏は5年間で国家公務員5%以上純減という政府方針を「単に削ればいいというものではない」と批判した。

 しかし、一方で前原氏は、民主党政権公約を踏まえて公務員人件費総額を3年で2割削減する、と言明した。どう削減するのか。その方策を示すべきだ。

 対案作成は、官公労出身議員らの猛反発で難航しているという。前原氏は小泉内閣構造改革に関し、「既得権益を守ろうとする勢力と、とことん戦う意志があるのか」と述べた。だが「既得権益を守ろうとする勢力」にとらわれているのは、むしろ民主党ではないか。

 前原氏は、消費税の問題には全く言及しなかった。消費税率引き上げは、財政再建社会保障制度改革を進めるために、避けて通れない。政府・与党は、本格的な論議に入る姿勢を見せている。民主党として、消費税問題をどう考えるのか明らかにしたうえで政府・与党との議論に臨むべきだろう。

公務員人件費削減も消費税問題も、いずれも財政や国民生活に直結する大問題。ライブドアや牛肉で自民党を叩くよりも、これらの問題を徹底的に議論して欲しいと思います。その方が、長い目で見れば民主党の高評価につながるのではないでしょうか。

*1:たとえば12月17日の東京新聞に載っている連合の高木剛会長の発言「「対案路線はほどほどにしてはどうか。与党にかなうわけはない。自民党の挑発に乗らない方がいい」