ネット選挙解禁に向けて

元日の毎日新聞には、自民党世耕弘成参議院議員民主党鈴木寛参議院議員、および2ch管理人の西村博之氏の座談会が載っていました。

ネット選挙:政治は変わる?3者座談会 世耕弘成氏/鈴木寛氏/西村博之氏

各氏の発言から興味深い箇所を引用して所感を書きます。


まず、今や自民党のネット担当にして、党内きっての政策通との噂も高い世耕氏の発言から、日本でのマスメディアとブログの存在意義に関する部分を引用します。

世耕 なぜ、日本ではネットによって政治がパッと盛り上がらないのか。ネット利用が禁止されているというが、それは選挙の12日間だけ。それ以外はいくらやってもかまわない。公選法が禁止しているからという理屈は成り立たない。じゃあ国民性かとかいろいろな見方があった。最近、答えだなと思い始めてきたのは日本はマスメディアが信用されているということ。アメリカは中立性原則もなくて、新聞や放送局によって、民主党系、共和党系とはっきりした論調を構えている。韓国は逆に独裁政権が長くて、その中でマスメディアのあり方に対してうがった見方があった。

なるほど。確かに、日本の大メディアは中立公正というイメージがあります。新聞社ごとの主張の思想は異なるものの、事実報道は概ね公正に行われていると言って良いと思います*1

世耕 ストレートニュースとか速報は、やはり組織力がある今のマスメディアが優位性を持っている。一方、論評となると、ブロガーの中には法律とかマーケティングとか、専門性を持ってる人がいろいろな視点で書き出しているから、新聞も調査報道を強化しないと、ネットに取って代わられる可能性があるんじゃないかという気がします。

これは、私自身が以前から折に触れて書いてきたこと*2。やはり、マスメディア(特に新聞)は正確かつ公平な一次情報報道を最優先の使命とすべきです。その報道を基にして各ブロガーが様々な視点から意見を述べる、というのが健全なアマチュアネットジャーナリズムのあり方だと思います。


次に、ネット選挙解禁のための公職選挙法改正のあり方について、世耕氏と鈴木氏の発言を引用。

世耕 党として選挙期間中のネット解禁というのはもはや時代の趨勢(すうせい)だと申し上げてきましたので、実現に向けて取り組んでいきたい。ただ、実際に全部解禁するとなると、例えば郵便や電報、電話の世界で規制されていることとの整合性をとらなくてはなりません。

鈴木 マニフェスト政権公約)でも、ホームページ、電子メール、携帯電話、ブログを明記して解禁することを約束しています。ネット解禁というパラダイム(共通の基準)チェンジの時に、公職選挙法の持っている解釈のあいまいさなど根本的な問題について議論しておくべきです。

この件については、鈴木氏の方が踏み込んだ主張をしています。現在の公選法は、少々無理があると思われる解釈で運用されているのは確かです*3。個人的に、選挙運動に対する制限は、諸メディアの利用に関してはもう少し緩やかでも良いのではないかと思います*4


最後に、西村博之氏の発言から引用します。ネット選挙運動の解禁により、候補者への誹謗中傷問題が生じるのでは、という予測。現在のネットの状況を見る限り、杞憂とは言えません。

西村 けっこう悲惨なことになるという予測もたつ。政治家がブログをやってました。そこにコメントが書けます。例えば、あす投票日という時に「○○さんは調査費を暴力団に寄付していたといううわさがあります」と書かれたとするじゃないですか。それが明らかなウソだったとしても、情報は瞬時に広がり、いちいち否定することができないんですよ。それを直前に見た人がどう感じるか。なんか怪しいことしている人だと思っちゃう。そういう可能性がある。もうコメントできないようにする。結局そういう形でコミュニケーションが閉じてしまう気がする。もしやれるとしたら、誹謗(ひぼう)中傷を書かれても気にならない人気のある候補者。今なら杉村太蔵衆院議員とか。

コレを読んで最初に思ったことは、別にコメント欄を閉じてコミュニケーションを封じても構わないじゃないか、ということ。ネットを通じて候補者のリアルタイムでの声が読めるようになるだけでも相当な進歩だと思うのです。


また、候補者ブログがコメント欄をOPENにする場合、根も葉もない誹謗中傷を書いた人間にはある程度厳しい罰を導入すればよいのではないでしょうか*5。実メディアでも、事実無根の記事を書いた人間は名誉毀損に問われるわけですから。


理想論ですが、大多数のネット利用者が「ソース無き中傷など信用せず、無視する」という姿勢を身につけるのが最も望ましいと思います*6。そうすれば、現在2chや特定ブログのコメント欄などで下らない誹謗を書いている馬鹿も自然と減少するでしょう。世間でのネットの印象が良くなり、ネット選挙解禁への加速度も増し、良いことずくめです。

*1:細かく見れば怪しい記事も散見しますが

*2:http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051118#p1では世耕氏のインタビューに絡めて書いてます

*3:「選挙運動のための文書図画の頒布」に無理矢理インターネットを当てはめていることなどが一例

*4:一方、個人の生活時間に割って入るような戸別訪問等を解禁するのは賛成しませんが

*5:匿名のネットでも、警察力が入れば個人特定は十分可能でしょう

*6:私自身、2chなどでの一行誹謗などは、読む価値すらないと判断しています