市場原理主義への歯止めは必要だけど

元日の読売新聞の社説についての要約&所感。
人口減少時代へ国家的対応を 市場原理主義への歯止めも必要だ(前半)
まず、人口減少時代への対応として、読売は次のようなことを主張しています。

  • 短期的には労働力人口の急減を防ぐため、女性が就業しやすく、かつ意欲と体力がある高齢者が就業を続けられるような社会的環境を整備すべし
  • 長期的には、国家戦略的視野での社会保障システムの組み直しが必要
  • そのために、支出削減のみならず消費税増税を避けて通ってはならない。

社会保障システムの組み直し」は大筋では同意できるものの、やや漠然としている感があります。難しい課題だから仕方が無いかと思いますが……


疑問に思ったのは次の箇所。引用します。

【国民説得が政治の役割】

 国民の中に抵抗感があるとしても、たとえば、福祉目的税化するとか、あるいは欧州諸国では15〜25%の消費税(付加価値税)が普通のことなのだと、国民を丁寧に説得し先導するのが政治の役割ではないか。

 さらに、当然のことながら、人口減少社会で中長期的な財政・税収基盤を安定したものにするには、経済全般の効率化、労働生産性の向上を進めていかなくてはならない。

 ところが、昨今の経済界は、市場原理主義的な投機ファンド、あるいは内外の投機ファンドをバックにしたIT(情報技術)企業などによる株買い占め騒動に揺れている。

 投機ファンドの行動原理は、要するに、安値で買い占めた会社株を高く売り抜ける、というだけのことである。

 市場のルールが明示的に禁じていないことならいかなる手法を採ることも辞さないことから、“ハゲタカファンド”などとも言われる。

 短期的な利益を狙って会社資産を食い荒らし、長期的な企業利益を損なう。ひいては、日本経済の長期的な基盤全体を荒廃させる。経済の効率化、生産性の向上にはなんの貢献もしない。

国民の理解を十分に得ないままに下手に消費税増税を行うと、消費意欲減退→デフレ→不況、となる恐れがあります。これは絶対に避けねばなりません。そのために国民を説得するのが政治の役割、という主張には全面同意しますし、経済全般の効率化や労働生産性向上が重要であることも当然。しかし、そのことと「ところが」の後の部分のつながりが不明。投機ファンドや株買占めが長期的な企業利益を損なうというのは本当でしょうか? 客観的根拠が不明。少なくとも「投機ファンドが経済の長期的基盤を損なった」と思われる事例は無いのではないかと。


昨年は、ライブドア楽天などによる大手メディア買収未遂事件がありました。大手メディア側の読売新聞がこれらの勢力を快く思わない気持ちは分かりますが、どうも感情的に嫌っているだけのように見えます。たとえば、買収した側が元の経営者よりも大きな長期利益を生み出す可能性もあるわけです。


市場原理主義任せでは長期的な企業利益を損なう可能性があるという点は同意します。しかし、それは株買占めや投機ファンドのことではないと思います。これについては明日書くことにします。