たばこ税・将来的には一般財源化を

たばこ増税に対して、一部の人々から反対の声が上がっているようです。そのような意見のブログを幾つか見てみましたが、殆どは喫煙者の方。私は非喫煙者なので、この増税は痛くも痒くもありません。


たばこ増税の是非については、喫煙者か否かで考え方が大きく変わるので、ここでは深入りしません。特定の人々を対象とする増税は“公平性”に欠ける、という批判もあるようですが、そもそも“公平性”って何でしょう。誰もが納得する定義など存在しないように思えます。よって、万人が合意できる案など出せそうにありません。


次のニュースを見る限り、小泉首相非喫煙者なのかなあ。
「1本10円上げでもよかった」=たばこ増税で小泉首相が本音(22日 時事)

 「1本5円、10円上げてもよかった」。小泉純一郎首相は21日夜の与党の税制調査会幹部との会談の席で、2006年度税制改正で1本1円引き上げたたばこ税についてこう語った。健康対策などに充てるためには、大幅な引き上げが望ましかったとの本音をもらしたものだ。
 首相は「諸外国ではたばこは500円、600円する。日本でも禁煙が浸透してきているし、500円くらいにしたらいい」と指摘した。これには、自民党内切っての財政再建論者の柳沢伯夫税制調査会長もさすがに、「それは慎重な議論が必要です」と苦笑いしていた。 


ここからが本題。政府税調会長が児童手当拡充のための(事実上の)特定財源としてのたばこ税増税を批判した件について。
たばこ増税は「税を汚す」 政府税調会長が批判 (共同)

 政府税制調査会石弘光会長は27日の財政制度等審議会の会合で、与党が児童手当拡充の財源として来年度のたばこ増税実施を決めたことについて「(税を)取りやすい所から取るとの考え方で、税を汚すもの」と批判し、たばこ税が事実上特定財源化されたことに不快感を示した。


 石会長は11月の記者会見で「(たばこ増税は)将来課題としてやるにしても、一般財源という形でやるのが筋」と述べ、時代に逆行する特定財源化に否定的な考えを示していた。


 自民党税制調査会柳沢伯夫会長も税制改正の議論の中で「特定の歳出を賄うためのたばこ増税は税体系をゆがめる」と指摘。しかし少子化対策を政策の柱に掲げる公明党の要求に「今後の政権運営を考えれば最終的には受け入れざるを得ない」(党税調幹部)として実現した。

石氏の「一般財源という形でやるのが筋」という意見は、財政のことを第一に考えるなら、基本的に正論です(この点は後述)。


ただ、特定財源増税が「税を汚す」とか「時代に逆行」という幾分主観的な表現はちょっとどうかと思います*1。実際、特定財源にも利点はあります。財政的なメリットとは次元が異なりますが、税の使い道が明確なので、増税であっても一部有権者の理解が得やすいわけです*2。今回の件に即して言えば、児童手当拡充のためと明記すれば、少なくとも公明党支持者の大半の納得が得られますし、既に子供が居る家庭にとって児童手当拡充は有難いでしょう*3


話はたばこ税から少しそれますが、今月の上旬、与党は「道路特定財源を税率はそのままで一般財源化」することで合意しました。これに対し、自動車業界や道路ユーザの一部が反対しています。引用等はしませんが、両者の主張は次の記事に簡潔に書かれています。
道路特定財源の一般財源化(フジサンケイビジネスアイ)
これなども、一般財源化が理解され難い好例と言えましょう。


しかし、純粋に財政第一に考えると、使い道を限定しない一般財源の方が、融通が利きやすく合理的なことは確実です。道路財源同様、たばこ税も将来的には純粋な一般財源化を検討すべきかと思います。もちろん、焦る必要はないでしょう。時間をかけて説明し、可能な限り多くの納税者に理解を得てからでも遅くはないかと思います。

*1:個人的には、「取りやすいところから取る」という考え方は、さほど非合理だとも不公平だとも思いません

*2:万人が納得する増税はまずあり得ないでしょうねえ

*3:ただ、児童手当拡充が少子化歯止めに寄与するかどうか、効果を見定める必要はあります。少しでも寄与すれば良いのですが、果たしてどうでしょう? これについては気が向いたら後日に。