外交カード論は理解できない

これも2日遅れですが、11月30日の小泉首相自民党本部での講演について。
憲法、靖国… 首相大いに語る(ライブドアニュース)
中韓との関係と靖国問題に言及した部分だけ引用します

 「いま靖国問題をめぐって日中、日韓関係がぎくしゃくしている。私は日中友好論者、日韓友好論者だ。米との関係を大事にしていきながら、中国、韓国とも、世界各国とも協力していこうというのが、一貫した私の考え方」と話し、「いま日本の社会は、かつてないほど豊かで平和。二度と戦争を起こしてはいけない、尊い犠牲の上に今があるということを忘れてはいけないという気持ちで、総理大臣小泉純一郎が一人の国民として参拝している。これに対して日本国民、ましてや外国から、なぜ批判されるのか分からない。精神の自由だ」と参拝理由を強調。

首相は「これ(自身の靖国参拝)に対して日本国民、ましてや外国から、なぜ批判されるのか分からない」と言っていますが、中韓からの批判に限っては、明らかに靖国神社が持つ歴史認識に原因があります*1。首相ほどの人が「分からない」というのは恐らく嘘でしょう*2

 「日中、日韓の友好を極めて重要に考えている。相互依存的な関係、お互い繁栄していこうという関係になっていくべきだ。一つや二つの意見の相違、対立があるからといって、全体をおかしくさせてはいけない」と語り、「靖国の問題は外交カードにならない。長い目で見れば将来、理解される問題だろうと思っている」と断じた。

首相の主張には概ね同意ですが、「靖国の問題は外交カードにならない。長い目で見れば将来、理解される問題」だけは引っ掛かります。「外交カード論」は靖国大好き派の典型的主張。実際、各所のネット右翼ブログは小泉発言のこの部分をGood Job扱いしています。


しかし、靖国中韓の為政者にとって、単なる外交カード的存在ではありません。中韓は心の底から靖国神社を嫌っています。私自身、靖国神社が大嫌い(正確には靖国神社歴史観が大嫌い)なので、彼らの気持ちが分かるのです。靖国神社歴史観を変更するかA級戦犯の合祀を取り消すかしない限り、首相の靖国参拝は長い目で見ても絶対に中韓には理解されないでしょう。


私が以前から主張している通り、靖国論争は宗教論争に他なりません。一般に、異教徒の主張に心から納得するのは絶望的に至難の業なのです。
【関連過去記事】 戦争体験者ナベツネ氏の認識 

*1:日本国内には、憲法違反の疑いを理由に靖国参拝を批判する人も居ます

*2:首相の立場で一宗教団体の歴史認識に干渉するわけにはいかないので、この嘘は仕方ないかと