耐震偽造被害住民への公的支援実現へ

耐震計算書偽造事件に関して、政府が公的支援案を出してきました。
耐震偽造:住民支援に「補正予算も検討」 北側国交相(毎日新聞)

 北側一雄国土交通相は2日の閣議後会見で、耐震データ偽造問題に関し、耐震強度が偽造された分譲マンションの住民の支援について、「05年度予算の活用を検討する。不足なら補正予算も検討しないといけない」と述べた。


 支援策については「住民の転居費用、建物解体費用、公営住宅の家賃、周辺住民の安全に対する費用」などが検討対象になるとし、予算規模は「偽造物件が広がっており、事件の全体像が見えない。数字は申し上げられない」と話した。

公的支援については世間に異論もあるでしょう。「一部の人間の悪行がもたらした結果に、何故税金を注ぎ込む必要があるのか」という意見です。気持ちはわからないでもありません。


しかし、この件に関しては、建築主の財力を超える部分に限り、公的支援を行うのが良いと思います。今回の事件は、国交省の役人を含め、多くの人々の想定外だったことでしょう。私自身、地震が多い日本国で、中でも大地震が常に噂される関東地方で、これほどあからさまに耐震に手を抜く人が現れるとは想像もできませんでした。想定できなかった責任をとるという意味で、公が痛みを負担すると考えればスッキリします*1


それに、http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051129#p1にも書いた通り、国交省の責任が相当に大きい可能性もあります。だとしたら、公的支援は避けられないでしょう*2


もう一つ。
国交省、欠陥住宅対策で業界負担の保険創設を検討 (日経)

 国土交通省は2日、マンションや戸建て住宅、ホテルなどの建築物の完成後に欠陥が見つかった場合の建て替えや改築費用を、建築業界全体で負担する新しい保険制度を創設する検討に入った。耐震強度偽装の被害が広がっていることに対応し、設計事務所や建築確認をする検査機関などにも加入を義務づける方向だ。ただ事業者にとって保険料負担がかなり重くなるとして、新制度の創設には慎重に取り組むべきだとの意見もある。


 北側一雄国交相は同日の閣議後記者会見で「欠陥住宅被害は深刻だ。保険制度の拡充を検討したい」と述べた。社会資本整備審議会国交相の諮問機関)に専門部会を近く立ち上げ、損害保険業界などと調整しながら細部を詰める。 (16:10)

業界に保険負担を課すことでの再発防止ですか。方向性は支持しますが、事業者負担増が物件価格に跳ね返って住宅需要が落ち込み、景気に悪影響を及ぼすというシナリオも考えられるので、難しいところです。実現するなら、細部を入念に検討して慎重に行うべきでしょう。

*1:個人的な意見に過ぎませんが、私は仮に今回の件で増税が行われたとしても甘受します

*2:支援実現の時期は、“余罪”も含めた事実関係が明確になった後にすべきことは勿論です