北方領土特集

幼い頃から、「北方領土は日本固有の領土」というPRを多数目にしたり耳にしたりしていましたが、恥ずかしながら、そのように主張する根拠を3年くらい前まで知りませんでした。外務省pageで知った次第。インターネットは有難いです。


北方領土問題の概要(外務省)
ここでの重要なポイントは、次の3つでしょう。

  1. 1855年の日魯通好条約(下田条約)で択捉島とウルップ島の間を国境と確認したこと
  2. 1875年の樺太千島交換条約で、「千島列島」の中に北方四島が含まれていないこと
  3. だから、1945年にソ連が日ソ中立条約に違反して対日参戦し北方四島の全てを占領したのは無効であること

ところで、日本の公式な主張は上記のようなものですが、ロシアの主張はどうなのでしょうか。ウィキペディアに簡潔に書かれています。


北方領土(Wikipedia)
ここでのポイントは次の2つでしょう。

  1. 1945年のヤルタ会談ソ連の参戦は連合国に対し事前に承諾されている。
  2. 日本は戦争に負けたのだから、領土を削られても文句は言えないよね。



更に、ネットで見つけた典型的な主張3種類にリンクしておきます。
(A) 感情的には返還を望むが、費用対効果を考えると、要らない。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~korea-su/korea-su/jkorea/sonota/hoppouroudo.html
(B) 日本には領有を主張する資格が無い、という考え方から、要らない
http://homepage3.nifty.com/tenshinokuma/hopporyodo.htm
(C) それでも「北方領土」は日本の領土
http://www004.upp.so-net.ne.jp/teikoku-denmo/no_frame/history/honbun/hoppou_ryoudo2.html


では、私の考えを記しておきましょう。


国際法的な正当性は、日本にかなり分があります(米国もそう認めている)。でも、やはり万人が認める正当性ではないと思います。仮にNTV系『行列のできる法律相談所』でとりあげるとすれば、4人の弁護士のうち3人が日本支持、という感じでしょうか。しかも個人的には、「日本は戦争に負けたのだから領土を削られても文句は言えない」という考え方にかなり共感できます*1


そもそも、この種の外交問題国際法的な正当性で処理するのには無理があるのかも知れません。国内の法律ならば、裁判所が法に照らして裁いて強制執行することが可能ですが、国際法にはそのような強制力がありません。


ならば、北方領土が返還された場合の損得で判断してみましょう。現に北方領土に住んでいるロシア人にとって返還は明らかに大ダメージなのですが、ここは敢えて日本人の立場に絞ります。


元島民の方々にとっては勿論切実な問題。経済的に得をするのは現地の漁業関係者。でも、他の一般的な日本人にとっては大した利益にはならないような気がします。逆に「北方領土はいらない」で書かれているような負の問題が生ずる可能性もあるでしょう。よって、日本人の立場に絞って考えても、手放しで返還が万人の利益になるとは思えません*2


よって、私個人の感情では、「返還されてもされなくてもどちらでも良い」が結論になります。ロシア人の気持ちまで考慮するなら「返還してもらわなくとも良い」と思います。しかし、これでは余りに無責任な気がするので、別の観点から考察してみました。


もし、私が日本の独裁者だったら、北方領土問題をどうするか?


これに対する答えは、「本音ではどちらでも良いと思いつつ、本音を表面に出さず、強硬に4島の返還交渉を続ける」です。


何故か? 国際法上で日本に分がある領土問題で弱腰の姿勢を見せてしまうと、将来的により深刻な(=国益を大きく損なうような)外交問題が勃発した際に、他国に付け入る隙を与える危険があると思うからです。現に、日本は北方領土以外にも領土問題を抱えています。もし返してもらえるならそれはそれで良し。返還が実現しない場合は、表面上は悔しそうなポーズを見せながら、心の中では「これで良し」と納得するのです。

*1:負け戦というのは、そのくらい重大なことだと思います

*2:なお、「日本人ならば日本の領土の拡張を望むのが当然」という情緒的判断は、リアリストである私には全く理解できないので考慮しません