産経の感情的な新追悼施設批判

大新聞がらみなのでカテゴリを「メディア」にしますが、内容的には「ネット右翼」の方が相応しい話題です。


11月11日付の産経新聞の小コラム「産経抄」は国立戦没者追悼施設批判。批判するのは構わないのですが、一部、客観的正当性皆無な悪質批判が書かれています。これでは、そこら辺のネット右翼ブログや2chと同レベル。該当部分を引用します。

▼もっと解せないのは、宗教にはもっとも理解のある政党だと思っていた公明党が「無宗教」の施設建設にいたく熱心なことだ。共産国家でもないのに死者を追悼する場が「無宗教」で本当にいいのだろうか。

どうやら、産経の記者は「無宗教」を「宗教色が無い」と解釈しているようですが、http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051030#p2に書いた通り、これは事実誤認。「特定宗教の影響が無い」と解釈すべきです。この段落を読む限り、大メディアの記者らしからぬ無知か、と思ったのですが…
 

▼議連の先生方は、理想型として米ワシントンにある国立アーリントン墓地を頭に描いているようだが、この墓地の入り口には「わが国の最も神聖な聖地(SHRINE)」という看板が立てられている。靖国神社も英訳すれば、「YASUKUNI SHRINE」となる。

産経の記者は、新追悼施設がアーリントン墓地のような「多彩な宗教での追悼方法を認める施設」であることを知っているようです。にもかかわらず、前段落で「無宗教」に難癖をつけるのは矛盾しています。意図的に事実を捻じ曲げた批判の仕方。無知ゆえに「無宗教」を批判している(と思われる)ネット右翼ブログなどよりも悪質でレベルの低い言論。


最後の段落は悪質批判ではありませんが、引用します。

▼そんなに「国立」がいいなら、国家護持法案をつくって靖国神社を国営化する方法を考えてはどうなのか。国論を二分するのが確実な事業に、貴重な税金をつぎこむことはない。他国よりも、戦死者のご遺族の声を十分に聞いてこそ日本の「政治家」だろう。

「国論を二分するのが確実な事業に、貴重な税金をつぎこむことはない。」は傾聴すべき批判意見だと思います*1。ところで、この段落からも、靖国問題が宗教問題であり、万人が満足する結論などあり得ないことがわかります。「戦死者のご遺族の声を十分に聞いてこそ日本の「政治家」」とありますが、「国論を二分する」問題であるからこそ、日本の政治家ならば、靖国神社の宗教観や歴史観に賛同できない日本人の声も聞くべきだと思います。

*1:私自身の所感はhttp://d.hatena.ne.jp/dslender/20051030#p1に詳しく書きました