旧民社党の憲法改正案

先月の末辺りに、民社協会(旧民社党系の民主党議員の会)が新憲法草案を発表した、というニュースがありました。自民党案が発表されてから少しあとでした。どうせ自民案と比べて大して変わり映えしないだろうという先入観でニュースをスルーしていました*1保守系ブログでもこの話題を扱ったところは少なかったようです。


ところが、昨日になって、民社協会案にも良い点があることを知りました。民主党の神戸市議会議員の大井としひろさんのブログ記事


 憲法改正論議(おーいぶろぐ)


に草案の前半部分が掲載されています。現憲法の9条に相当する箇所を引用します。

(国際平和主義、軍隊、徴兵制の禁止) 
第三条 ① 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 日本国は、国の独立と主権を守り、国民の生命、自由および財産を保護し、国の領土を保全し、ならびに国際社会の平和に寄与するため、軍隊を保持する。
③ 軍隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。
④ 徴兵制は、これを設けない。
⑤ 安全保障に関する事項は、法律でこれを定める。


比較のため、自民党草案の該当部分を引用します。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。


第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。


2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。


3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
どちらも、現在の9条1項はそのままで、第2項で自衛軍または軍隊を規定しています。


どちらの案も実質的にはほぼ同等かと思われますが、私は民社協会案が徴兵制禁止を明文化したことを高く評価します。http://d.hatena.ne.jp/dslender/20051014に書いた通り、現在でも第9条の改正に反対する国民は少なくありません。憲法で軍隊を認めれば、なし崩し的に徴兵→戦争に繋がると危惧する人は結構居ます*2。徴兵禁止を明文化しておけば、9条改正への抵抗感は多少和らぐのではないでしょうか*3


しかも、かつての民社党と言えば、自民党以上に“右寄り”なことで知られていました。そのような勢力が徴兵制を否定する姿勢を見せる意義は大きいと思います。


今後、憲法改正論議の中で、民社協会を含めた各党派の良い点が反映されて、多くの国民が容認できる新憲法案が完成することを念願します。

*1:自民党案が様々な意見の人に配慮したまずまずの出来だったので、今更旧民社党なんて、と思っていたのです

*2:明治維新以降、先の大戦に至るまでの対外戦争は全て徴兵制下で行われている歴史があるので、そう思う人の気持ちはよく分かります

*3:憲法以外の法律で不徴兵を保障する手段でも実質的には同じですが、憲法本文に書かれているインパクトは大きいと思います