今更ながら民主党の敗因について

時期遅れの話題ですが、選挙後1ヶ月記念(意味不明)ということで。


先の総選挙での民主党の敗因といえば、郵政への姿勢に一貫性が感じられなかったこと、争点を絞った小泉首相の主張に比べ民主党の公約が分かりにくかったこと、自民党の造反・刺客騒動で民主党への注目度が薄れたことなどが挙げられると思います。これらに関しては多くの人の意見が一致するでしょう。


また、民主党が様々な考えを持つ人の寄り合い所帯で、党としての主張が見えにくい、という意見もあります。確かにそういう側面はあるのかな、と思います。


ただ、「では民主党は今後どうすべきか」となると、人によって意見が大きく分かれていると感じます。具体的な2つの例にリンクします。


まず、ジャーナリストの西村幸祐氏による保守系(というかネット右翼系)ブログ「酔夢ing Voice」の9月14日のエントリ
民主党再生の法、教えます。「マンガ嫌韓流」を読め。
から引用。


壊滅的な敗北を喫した民主党は、なぜ、そうなったのか当事者が一番分かっていないようだ。なぜ、「政権交代を目指す」というスローガンが失敗に終わったのか考えた方がいい。「日本をあきらめない」というコピーが、支那朝鮮半島の日本侵略の意図と重なって受け止められ、ネット上で揶揄されたことと繋がっている。それが一番大きな敗因だったことを認めなければ、民主党社民党の辿った道を行くことになる。民主党に日本を任せれられないという気持ちが多くの国民に共有されていたわけだが、その理由は全て民主党にある。別に博報堂外資系PR会社に責任があるわけではない。


もし、民主党北朝鮮への制裁、人権法案の国会提出撤回、外国人参政権反対、首相の靖国公式参拝東シナ海ガス田の支那の盗掘阻止、竹島奪還、などを公約に掲げていたら、ネットから巨大ハリケーンが発生し、民主党が地滑り的勝利を収めていた可能性がある。だが、現状の民主党にはそれらの政策を掲げることが不可能だった事情が敗因になったのだ。自民党には、まだその可能性が残されていたからだ。
要するに、盲目的に中韓を嫌うタイプの保守派は、民主党外交政策自民党に近づけば勝てたかも知れない、と考えているのです。いちいち引用しませんが、西村幸祐氏以外にも同様の主張をしている人は多数見かけます。


しかし、そのように考える人はどれくらい居るのでしょうか? 2chなどを見ている限りは多数派にも思えますが、リアルでの私の周囲には余り見掛けません。仮に民主党が「アジア重視」や「主権共有」などの主張を完全放棄して選挙に臨んだとしても、地滑り的勝利をもたらすほどに得票が増えたとは思えないのです*1


一方、それとは正反対に、民主党自民党との違いをハッキリ打ち出せば勝てたかも知れない、と主張する人もいます。社民党の東京都幹事長の広田貞治氏です。
社会主義協会 - 2005年10月号:広田論文
 小泉自民党の郵政一点突破戦術に対抗する政策の柱がなく、政治的立場もあいまいなまま、政権選択という抽象的な選択を迫ったのも的外れであった。選挙戦の途中で「貯金預け入れ限度額の引き下げで総貯金量の削減」を発表して自民・公明に攻撃されるなど郵政民営化に対する姿勢も国民には分かりにくかった。公務員人件費2割削減、郵政職員7万人削減などで自民党と競いあうなど、労働者の雇用や権利を守る姿勢に乏しかった。所得税法人税の累進性の再強化で金持ちや大企業にそれなりの負担を昔のようにしてもらうことを一切言わずに、消費税引き上げだけを言うなど、自民と本質的に変わらないことが明らかになった。政党は労組に媚びることは不要であるが、労働者の生活や民主的権利、生存の安定などの政策を掲げ努力するのが労働者を重視する国民政党としては当然である。こうして勤労者の民主に対する期待が薄れ、政権交代のエネルギーはそがれた。一方、郵政民営化を急ぐ財界は、今回は自民党支持を強めた。


 社民や共産が憲法九条改悪反対を訴えたが、民主は一言も触れず、イラク撤兵も強調せず、結果的に自民・公明の争点隠しに手を貸し、平和に危機感を持つ有権者も民主に期待できなかった。ただ、アジア外交重視はときどき訴えたのは多少の救いであった。
要するに、社民党の幹部は、民主党社会民主主義憲法9条改正反対を採るなど、社民党共産党と協力すれば勝てたかも知れない、と主張します。同様の主張は他所でも見かけます。


しかし、私はこの主張も若干疑問に感じます。共産党社民党の支持率の現状を考えると、政策をこの両党に近づけても得票の伸びはさほど期待できないのではないか、と考えられるのです。


結局、西村氏にしても広田氏にしても、単に「民主党には自分好みの政治的主張を持って欲しい」と望んでいるだけではないでしょうか。


そう考えると、今後の民主党の行く末は厳しいな、と思います。右寄りの主張をすれば左の人に嫌われ、左寄りの主張をすれば右から馬鹿にされるとは…


なお、私自身の主張は、典型的中韓嫌い保守派の西村氏とも、社会民主主義憲法改正反対の広田氏とも、相当に隔たりがあります。その辺は過去の日記から読み取れると思います。

*1:逆に、憲法9条護持が望ましいと思う層の票が離れる可能性もあります