小泉首相の戦後60年談話

今日は戦後60年終戦記念日。政府は、先の大戦への反省やおわび、平和国家として歩む決意などを盛りこんだ小泉首相の談話を閣議決定しました。終戦記念日の首相談話は、1995年の村山内閣以来です。

全文を載せておきます。

私は、終戦60年を迎えるに当たり、改めて今私たちが享受している平和と繁栄は、戦争によって心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、2度とわが国が戦争への道を歩んではならないとの決意を新たにするものであります。

 先の大戦では、300万余りの同胞が祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは戦後遠い異郷の地に亡くなられています。

 また、わが国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、2度と戦禍を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。

 戦後わが国は、国民の不断の努力と多くの国々の支援により廃墟から立ち上がり、サンフランシスコ平和条約を受け入れ、国際社会への復帰の第一歩を踏み出しました。いかなる問題も武力によらず平和的に解決するとの立場を貫き、ODA(政府開発援助)や国連平和維持活動などを通じて世界の平和と繁栄のため物的、人的両面から積極的に貢献してまいりました。

 わが国の戦後の歴史は、まさに戦争への反省を行動で示した平和の60年であります。
 わが国にあっては、戦後生まれの世代が人口の7割を超えています。日本国民はひとしく、自らの体験や平和を志向する教育を通じて、国際平和を心から希求しています。今世界各地で青年海外協力隊などの多くの日本人が平和と人道支援のために活躍し、現地の人々から信頼と高い評価を受けています。また、アジア諸国との間でもかつてないほど経済、文化など幅広い分野での交流が深まっています。

 とりわけ一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要だと考えます。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています。

 国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全大量破壊兵器の不拡散、テロの防止・根絶などかつては想像もできなかったような複雑かつ困難な課題に直面しています。わが国は、世界平和に貢献するために、不戦の誓いを堅持し、唯一の被爆国としての体験や戦後60年の歩みを踏まえ、国際社会の責任ある一員としての役割を積極的に果たしていく考えです。

 戦後60年という節目のこの年に、平和を愛するわが国は、志を同じくするすべての国々とともに人類全体の平和と繁栄を実現するため全力を尽くすことを改めて表明いたします。

個人的に「一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要」が印象に残りました。中韓2国との関係改善の必要性を明記したことを高く評価します。様々な困難を抱える日中、日韓関係ですが、とりあえず日本の指導者が関係改善を望んでいることをアピールしないことには、進展が一切あり得ないと思われるからです。

いわゆる歴史認識の姿勢に関して、今回の談話は10年前のいわゆる村山談話をほぼ継承していると言えるでしょう。歴史認識に関しては国内でも議論が活発であり、様々な意見が存在することは承知しています。村山談話歴史認識を“自虐的”として嫌う人も近年の日本(特にWeb上)では増えているようですが、あらゆる国に理解してもらうことを重視するなら、この認識しかあり得ないことは厳然たる事実。

戦後60年の小泉談話は、無難かつ妥当なものであると評価しておきます。